ファミレスで、隣の席の子どもが通路を走り回っている。
トレーを持った店員さんが、ぶつかりそうになって立ち止まった。
「……え? 親は何も言わないの?」
見ると、親はスマホを見たまま。周りの視線にも気づいていない……。
ThreadsやYouTubeで、こんな場面の投稿を見てモヤッとしたことはないでしょうか。
「やっぱり、子どもは叱るべきじゃないの?」
「でも、あんまり叱ると子どもの自己嫌悪に……」
子どもを持つ親の僕としてはやはり、
海外でも、叱らない子育てに近い方法が一度大流行し、そのあと「優しすぎる」と見直されています。
この記事では、その流れをたどりながら、叱ることが正しい理由と、叱るべき場面をお伝えします。
SNSで怒りの声が上がる「叱らない育児」
「これが叱らない育児の結果か……」
今、ThreadsやYouTubeには、こんなコメントがあふれています。
怒りを集めているのは、たとえばこんな場面です。
- 電車の中で騒ぐ子どもを、親がまったく注意しない
- 友達を叩いた子に、親が「嫌だったんだね」とだけ声をかける
- 注意した人に「うちは叱らない方針なので」と言い返す
最後の「うちは叱らない方針なので」は、レストランや病院で実際にあった話として紹介されています。
見ている側としては、正直モヤモヤしますよね。
「なぜ、叱るべき場面で叱らないのか」と。
海外でも「優しすぎる子育て」は見直されている
「これって、日本だけの話なの?」
叱らない子育てをめぐる議論は、日本だけのものではありません。
海外では「ジェントル・ペアレンティング(優しい子育て)」と呼ばれる子育てが大流行しました。子どもの気持ちに共感し、罰ではなく対話で育てようという考え方です。2015年にイギリスの作家が本で広め、コロナ禍にSNSで一気に広まりました。
怒鳴られて育った世代の親が「自分の子には同じことをしたくない」と飛びついたのも、わかる気がしますよね。
ところが、数年もすると風向きが変わります。
- 2022年:アメリカの有名雑誌が「共感しすぎて、正さない」と批判
- 2023年:別の雑誌が「優しい育児は優しすぎる」と論じる
親自身も疲弊してしまいました。
ジェントル・ペアレンティングを実践する親の3人に1人以上が、子育てへの迷いや燃え尽きを口にしていたという調査もあります。
YouTubeでは、子どもが母親に向かって「Clean my room!(私の部屋を片付けて!)」と叫び、母親が最後まで「ダメ」と言わない動画も見られます。子どもは言うことを聞かず、親は疲れ果てる。海外でも、日本と同じことが起きていました……
「優しい育児」は「叱らない育児」ではなかった

本来、ジェントル・ペアレンティング(優しい育児)は、次の4つが大切だと紹介されています
- 理解:子どもの成長段階や、できること・できないことを理解すること
- 共感:子どもの行動の裏にある気持ちを理解しようとすること
- 尊重:怒鳴る、叩く、脅すといった恐怖で従わせない
- 境界線:ダメなことはダメと、穏やかに、でもはっきり伝える
しかし、④の境界線が抜け落ちてしまい、子どもが何をしても許されるという誤解が広まってしまったようです。
優しい育児は、もともと「ちゃんと叱る」子育てでした。
叱る親は、間違っていない
「叱ったあとに、『言いすぎたかな』と落ち込んでしまう……」
子どもとしっかり向き合って、叱っているうちにこのように思ってしまうことはないでしょうか。
こうした葛藤に悩むのは、ごく普通のことです。
会社で部下に注意したあと、「ちょっときつく言いすぎたかな」と気になってしまう。真面目な人ほど、そんな経験があるのではないでしょうか。
子どもを叱ったあとにモヤモヤするのも、それだけ子どものことを真剣に考えている証拠です。
子どもが一番よく育つのは、温かさと、はっきりした線引きがセットになった子育てです。逆に、温かくても線を引かない子育ては、問題行動などにつながります。
ただし、叱ることと怒鳴ることは違います。
- 怒鳴る:親の感情をぶつけること
- 叱る:「ここから先はダメ」と線を引いて、行動を止めること
大きな声も、怖い顔もいりません。叩いたり、人格を否定したりする必要もありません。叱るのは、あくまで子どもの「行動」です。
叱るべきなのは、この3つの場面
「叱るのが大事なのはわかった。でも、どんなときに叱ればいいの?」
まず、完璧じゃなくて大丈夫です。親が「これはダメだ」と感じたら、その感覚を信じて叱ってください。見て見ぬふりをするより、ずっといいはずです。
迷ったときの目安として、次の3つを紹介します。
道路に飛び出す、高いところから飛び降りる。ケガにつながることは、理由を説明する前に、まず止めます。
叩く、物を取る、お店で騒ぐ。誰かを傷つけたり困らせたりすることは、その場で「ダメ」と伝えます。
悪いことをしながら、チラッとこちらを見る。
「……これ、やっても大丈夫かな?」
そんな顔をしているときは、子どもが線を確かめているのかもしれません。こうした行動は「試し行動」と呼ばれることもあります。
ここで親が何も言わなければ、子どもは「やっていいんだ」と受け取ります。
線を確かめに来たときは、「ダメ」と伝えましょう。
叱らない育児のその後は?我慢する力が育ちにくい
「叱らずに育てたら、子どもはどうなるの?」
学校の現場から、気になる声が上がっています。スクールカウンセラーの藪下遊さんは、最近の学校で目立つ子どもの特徴として、こう話しています。
「思い通りにならないことに耐えられない」
藪下さんは2つ事例を紹介しています。
- 「授業時間が長いから」と、学校に行き渋るようになった
- 保護者は、本人の嫌がる様子に従って言われるままに
- 学年が上がっても、登校は途切れ途切れのまま
- もともと問題のなかった学力も、下がっていった
- やりたい遊びができないと「いじめられた」と訴える
- ドッジボールで当てられただけでも「いじめられた」と訴える
共通しているのは、思い通りにならない場面に耐えられないということです。
実際、ルールの少ない子育てをされた子どもは、自制心が弱い傾向があるようです。
- 順番を待つ
- やりたいことを我慢する
こうした力は、親に「今はダメ」と止められる経験の中で育っていきます。
もちろん、学校に行けない理由は子どもによってさまざまです。叱らなかったことだけが原因とは言えません。それでも、家で「思い通りにならない経験」をしていないと、外の世界でぶつかる壁は、もっと高く感じられてしまうのではないでしょうか。
まとめ:叱ることは、親にしかできない
「叱らない育児」は、海外でも日本でも、言葉だけがひとり歩きしたものでした。
本当に大切なのは、温かさと線引きのセットです。家で親が線を引かなければ、子どもはいつか外の世界で、もっと厳しい形でその線にぶつかります。
子どもの一番近くで、愛情を持って「ダメ」と言えるのは、親だけです。
今日、子どもが「ダメなこと」をしたら、自信を持って叱ってください。


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