コーチががみんなを集めて話をしている。
「……あれ?その輪の中に、うちの子がいない!」
見回すと、グラウンドの隅でしゃがみこんで、ひとりで砂をいじっている……。
習い事に通わせている親なら、一度はこんな場面にヒヤッとしたことがあるんじゃないでしょうか?
「うちの子、集中力がないのかな」
「このまま小学校に上がって大丈夫?」
そして、これは家での声かけで変えられます。
僕は子どもの野球のレッスンに付き添いながら、家でも「話を聞いて動く」練習を続けています。この記事では、その中で実際にやっていることを紹介します。
話を聞かない子は、どうなるのか
子どもの習い事で、ある男の子を見かけました。
コーチが説明を始めると、すっと輪から離れていく。練習が始まると、列に割り込んだり、走り回ったり。真面目に練習している子たちは、そのたびに手が止まっていました。
僕はその子を見て、胸が痛くなりました……
あれは、まるで昔の僕だったからです。
子どもの頃の僕は、まさにあの子でした。
コーチの話を聞かずにふらふらして、真面目な子たちの邪魔ばかりしていた。
- 話を聞いていないから、練習しても上手くならない
- 学校に行っても、先生の話が頭に入らないから勉強もできない
結局、ずっと落ちこぼれのままでした。
周りに迷惑をかけて、自分も何ひとつ得られなかった。
話を聞けないまま大きくなると、一番損をするのは子ども自身です。僕はそれを身をもって知っています。
じゃあ、親は何をすればいいのか。
幼稚園児が1時間集中できないのは当たり前
とはいえ、幼稚園児が1時間のレッスンにずっと集中できないのは、当たり前のことです。
幼児が集中できる時間は、だいたい「年齢+1分」くらいと言われています。年中・年長さんでも5〜7分ほど。大人でも1時間前後が限界とされているので、子どもが途中で気を散らすのは自然なことですよね。
だから、レッスン中に気が散るのは「うちの子がダメだから」ではありません。
ただし、「当たり前なんだから仕方ない」と放っておくと、小学校に上がっても、同じことが教室で起きます。
大事なのは、何に集中させるかを親が決めてあげることです。
「上手くなる」は結果。まずは「話を聞く」から
僕の子どもは野球を習っています。
始めたばかりの頃は、ボールはほとんど取れず、バットを振っても当たりません。止まっているボールを打つティーバッティングでも空振りでした。
この段階で「上手くなること」を目標に1時間がんばらせても、子どもはしんどいだけです。そこで僕は、目標を「コーチの話を聞くこと」ひとつに絞りました。
まずは号令に合わせて動く
難しいことを求める必要はありません。
たとえば練習の最初に、
その日のリーダーの子が「気をつけ、お願いします!」と号令をかけます。
それに合わせて「お願いします」と言う。最初はこれだけで十分です。
簡単そうに見えますが、これができない子も実際にいます。
次は指示に合わせて動く
号令に合わせられるようになったら、次はこんな動きを目指します。
- 「集合!」と言われたら、コーチのところに集まる
- 「休憩!」と言われたら、ベンチに行って水を飲む
ボールが取れなくても、バットに当たらなくても問題ありません。言われたことに合わせて動けるようになるだけで、大きな進歩です。
技術はあとからいくらでも身につきます。でも、話を聞いて動く基本ができていないと、何年通っても上達しません。
レッスン中は、親がそっと手助けする
とはいえ、「話を聞きなさい」と言うだけで聞けるようになるなら、苦労はしませんよね。
僕がレッスン中にやっているのは、2つだけです。
- コーチが話しているのに子どもがよそ見をしていたら、「ほら、コーチが話してるよ」と注意をコーチに向けさせる
- コーチの指示が伝わっていないようだったら、「こうやるんだって」と子どもに分かる言葉で言い直す
コーチの言葉はわからなくても、親の言葉なら聞けることがあります。
声をかけすぎないことが大切
ただし、これはやりすぎると逆効果です。
横からずっと口を出していたら、コーチにも周りの親にも嫌がられます。子どもも、コーチではなく親の顔を見て動くようになってしまう。
そのため、声をかけるのは明らかに周りの迷惑になっているときか、集中力が切れているときだけにしています。それ以外は、黙って見守ります。
これを続けた結果、うちの子はコーチが言ったことをやるようになったり、他の子と同じように練習できるようになりました。
最終的なゴールは、親がいなくても子どもが自分でコーチの話を聞けるようになることです。声をかける回数を少しずつ減らし、最後は見守るだけにしていきます。
本当に大切なのは家での声かけ
レッスン中の手助け以上に大切なのが、家での声かけです。
毎日いちばん長く一緒にいる親の言葉が通らないのに、週に1回会うコーチの言葉が通るでしょうか。僕は、親の話が聞けない子は、コーチの話も聞けないと考えています。
だから僕は、家での声かけを一番大事にしています。
- 「靴下はいて」
- 「パンツ履いて」
- 「トイレ行こう」
こういう日常のちょっとした指示を、言われたらすぐやる。まずはここからです。
地味に見えますが、これが「人の話を聞いて、その通りに動く」練習そのものです。実際、基本的な生活習慣が身についていないことが、学校で先生の話が聞けない子どもにつながっているのでは、という指摘もあるようです。
コツは、一度に一つずつ、短く伝えること。「靴下はいて、靴はいて、帽子かぶって」と一気に言うと、たいてい最初の一つで止まります。一つできたら、次を伝える。それだけで、指示はかなり通りやすくなります。
言ってもやらないときは、結果を体験させる
もちろん、言ってもすぐにやらない日もあります。
僕の場合、基本はその場ですぐにやらせます。それでも着替えないまま出発の時間になったら、急かすのをやめて、そのまま遅れて行きます。グラウンドに着くと、みんなはもう「お願いします」を終えて練習を始めています。自分だけ輪に入れません。これが、着替えなかった結果です。
これは、ルソーの『エミール』にある考え方を参考にしています。子どもが窓ガラスを割ったら、すぐに直さず、割れた窓から入る寒さを味わわせる、という話があります。親が何度も叱るより、自分の行動の結果を体で知るほうが、子どもの心に残ります。
ただし、ケガや体調に関わるような危険な結果は体験させません。また、あとで「ほら、言ったでしょ」と責めることもしません。帰り道に「今日どうだった?」と聞き、子どもが自分で「次は早く着替える」と言えれば十分です。
ほかにも、叱ることもあれば、待つことも、一緒にやることもあります。やり方は日によって違いますが、ひとつだけ決めていることがあります。それは、ふざけているのを見て見ぬふりはしないことです。
叩いたり人格を否定したりしなければ、方法は家庭ごとに違っていいと思います。大切なのは、「人の話を聞いて動ける子にする」という目的を見失わないことです。
「親の言いなり」の子にならない?
「言われたらすぐやる」と聞くと、親の言いなりになる子に育つんじゃないか、と心配になる人もいるかもしれません。
言いなりになってしまうのは、理由もわからないまま、ただ従わされている子です。心理学の研究でも、理由を説明せずに罰で従わせると、自信のない子に育ちやすいとされています。
参考:All About「子どもの将来に影響する親の養育スタイル」
指示を出すときは「なぜやるのか」もあわせて伝えることが大切です。
指示を聞いて動くのは、言いなりになることではなく、人として生きていくための基本動作です。人の話が聞けなければ、新しいことを教わることも、誰かと力を合わせることもできません。
だからまずは、人の話を聞くという土台をつくる。自分で考えて動く力は、その土台の上に育っていくものです。
正直に書いておくと、うちの子はまだ小さいので、目に見えて大きな変化があったわけではありません。この差がはっきり出てくるのは、もっと先の話だと思っています。小学校、中学校と進んで、先生の話を聞ける子と聞けない子の差が開いていく。そのときのための土台づくりです。
だから、今すぐ結果が出なくても焦らなくて大丈夫です。
そして、もう年長さんだから手遅れ、ということもありません。むしろ今から始めれば、少しずつ人の話が聞ける子になっていきます。
まとめ:家で育てた「聞く力」が、レッスンで生きる
先生の話を聞かずに砂遊びを始めてしまう子は、どこの習い事にもいます。幼稚園児なら、それは普通のことです。
でも、放っておけば本人は上手くならず、周りにも迷惑をかけ続ける。そして一番苦しむのは子ども自身です。
- まずは「お願いします」「集合」「休憩」に合わせて動ける子を目指す
- レッスン中は、本当に必要なときだけそっと手助けする
- 家で「言われたらすぐ動く」練習を毎日続け、やらないときは放っておかない
話を聞く力は、一日で身につくものではありません。
でも、毎日の声かけを積み重ねていけば、少しずつ確実に育っていきます。
焦らず、できることから始めてみてください。


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